File05 堀川寛氏(三滝グリーンチャペル 牧師/臨床心理士)

1960年生まれ。三滝グリーンチャペル牧師であり、臨床心理士でもある。広島市スクールカウンセラーとして子どもたちの心のケアにあたる一方、「おやじ日本広島」の会長として、公衆トイレの掃除や里山の手入れ、外国人の留学生や研修生が所属するフットサルリーグへの参加などを通じて、子どもの健全育成にも取り組んでいる。「落語鑑賞」「家庭菜園」など多彩な趣味をもつ趣味人でもある。

自分探しをしていた学生時代

社員Y

大学では造船工学科に進まれたということですが、いまのお仕事からは想像できませんね。

堀川

もともと理系人間で、しかも船が好きだったんです。でも、想定外だったのが毎日数学ばかりなんです。大学に入ってまで計算ばかりやるなんて思っても見ませんでした(笑)

社員Y

船を造りたいと思われていたんですか?

堀川

そうです。でも基本設計をするためには力学計算ができないといけないわけですから、しかたないことでした。でもボクはガッカリして2年で中退したんです。

社員Y

意外にあきらめが早かったということでしょうか(笑)

堀川

というか、模索していたんだと思います。自分が何をしたいのかを。で、とりあえず東京の神学校に行きました。実家がお爺ちゃんの代から牧師をやっていましたので、もし自分がそっちに向いていたらなろうと。

社員Y

牧師には向いていたと思われますか?

堀川

わかりません(笑)ただ、神学校を卒業して、広島に帰り4年ほど牧師をやったあと、さらに勉強するためアメリカに留学したんです。それは、ある程度自分の中で、この道でという覚悟があったからだと思います。

一念発起して臨床心理士をめざす

社員Y

現在は、臨床心理士であり、カウンセリングもおこなっていらっしゃるんですよね。

堀川

はい。留学から戻り本格的にこの教会で牧師として活動を始めたのが1991年。ちょうどバブル崩壊の頃です。とたんに社会が不安定になり、自殺者が年間3万人を超えたのもこの頃です。

社員Y

社会だけでなく人の心も不安定になっていったんですね。

堀川

そうです。教会に来られる方やそのご家族にも心に病をかかえる方が多かった。自分ができる限りのことでケアしたいと思い、不登校の小中学生をあずかる「フリースクール」を主催しました。勉強を見たり、キャンプに行ったり。ただ、素人考えでの活動で、資格も持っていませんでしたから、どこか不安もありましたね。

社員Y

ときには解決策がみつからない辛い相談もあるのではないですか?

堀川

逃げ出したくなるような場面もなくはないです。でももともと牧師ですから、人々により幸せになってもらいたいという基本的な考えがあります。どうせやるのだったらきちんとライセンスを持って取り組みたいと思いました。そこで、一念発起して臨床心理士の資格をとるために大学院に行くことにしたのです。それが45歳の時です。

社員Y

また学校に通われることになったんですね(笑)

堀川

学生が好きなんです。いつまでも学生気分でいたい方なんですよね(笑)

人間にとっていちばんの生きがいは、人と関わること

社員Y

いま多くの人が「うつ」などの精神的な不調をかかえているというなかで、わたしたちはどうすればいいと思われますか?

堀川

生きがいを見つけられるようにすることが大切です。昭和30年代や40年代の高度成長期の頃は、日本中が一つの方を向き、国民には生きる目的が生まれていました。ところが、いまは生きる目的を社会が与えてあげることができない世の中になっています。

社員Y

モノが豊かにあるだけではだめなんですね。

堀川

一つの例として、いま若い人たちは車を持ちたがりません。ガツガツ金儲けをしたいという若者も少なくなっています。若い人ならではのエネルギーを向ける先を見つけられないのです。ただなんとなく楽しく生きている。日本は特に世界との関わりも希薄だから、興味の対象となるチャンネルも見つけにくいのではないでしょうか。

社員Y

どんなことから始めればいいのでしょう?

堀川

特に高齢者でうつ病が多いというのは、生きがいを簡単に与えられないからなんです。そこで、ある老人ホームは幼稚園と併設されています。お年寄りに子どもたちと関わるチャンスを作ったんですね。わたしたち人間にとっての一番の生きがいは、人と関わることなんです。「少し誰かのお手伝いをする」とか、「誰かとおしゃべりをする」とか、ささやかなことでも人と関わることが、人間にとってもっとも実感を伴う生きがいなんです。そういうところに心の病気を少しでも解消するヒントがあると思います。

トイレ掃除で心も磨く

社員Y

堀川さんはおやじの会という活動をしていらっしゃるそうですね。

堀川

「おやじの会」はPTAと連動した組織で全国に約6千あります。2年前には「おやじ日本広島」が県単位の組織としては山形に次いで2番目に発足しました。わたしはその会長なんです。

社員Y

普段どういう活動をされているんですか?

堀川

地元の「おやじの会」では、月一回の活動で、公衆トイレの掃除や里山の手入れ、外国人の留学生や研修生が所属するフットサルリーグへの参加などを行っています。今日(取材は7月21日におこなわれました)も宮島の公衆トイレをみんなで掃除してきたばかりです(笑)

社員Y

今日もですか(笑)なぜトイレ掃除なんでしょう?

堀川

トイレをきれいにすることで、わたしたち人間の心も磨かれる、という信念に基づいた活動です。実際に、広島の暴走族をこのトイレ掃除の活動に連れて行ったら心を入れ替えたという話もあります。学校のトイレも、子どもたち自らきれいにすると、それからは大事に使うようになるんですね。

社員Y

汚したくなくなるということでしょうね。

堀川

そうですね。市内の公衆トイレはだいたいきれいにしてきました。最近では汚いトイレを探すのが大変なくらい(笑)

社員Y

実にさまざまな活動に参画されていらっしゃるんですね。

堀川

私自身も人と関わっていることが生きがいなんです。人と関わるということは、社会とつながることです。私にとって社会とは「人」。社会貢献とは「人間貢献」なんです。そして、私と関わりをもった相手も、それによって何か得るものがあったり、「面白かった」と思ってもらえたら、生きている実感が満たされていくのだと思います。



多趣味な堀川さんに「かっこうだけでも」とお願いして、聖堂の舞台でギターを構えてもらって写真撮影。撮影の合間、手持ちぶさたの堀川さんが爪弾いてくださったのが『Tears in Heaven』。「クラプトンが好きなもんで」とはにかむ堀川さんは、とてもかっこいいおやじ。 今多くの人に向けて手を差し伸べていらっしゃる堀川さんですが、「私自身、さーっと青空が晴れ渡っているような感覚はないんです」と言われます。それだけ困難な時代にわたしたちは直面しているようです。ただ、「自分のやりたいことを、面白いことをやろう」という信条を貫いているとのこと。「母がそういう人です。面白いことが好きで、何より人が好きで」。それを受けついだという堀川さん。その信条こそが堀川さんの「進化・挑戦」の原動力になっているのかもしれません。


2012.8 掲載

えんぎもん アップルのMacBook Air

堀川さんの愛用品は、超軽量のmac book。「とにかくコンパクトで使いやすいし、何よりかっこいい」。パソコンは仕事や生活の必需品ですが、もともと理系人間の堀川さんは、windows95がリリースされパソコンが一般化される、遙かに前から、パソコンの愛用者でした。友だちと共同で聖書の日本語ソフトを開発したほど。この商品は現在でもアップデートを重ねながら販売中だとか。「おたくなんです」と笑う堀川さんにとっての現在の片腕となっているのがコレ、というわけです。

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