file21 細川匡氏(デリカウイング株式会社 代表取締役会長兼CEO)

1947年生まれ。早稲田大学卒業後、コピーライターとして広告会社に入社。その後、大手広告代理店を経て、30歳で父が経営するヒロシマフーズ(株)入社のため広島に戻る。36歳で代表取締役社長に就任。セブンイレブンの広島進出に合わせ、先手を打ちパートナー契約を結ぶなど、常に時代を捉えた事業拡大や自社開発商品で業績を伸ばし続ける。コーポレート・スローガンには『Happy Together』を掲げ、社員だけでなく、お客様や地域、すべての人の幸福を目指す。また2007年には廿日市商工会議所会頭に就任し、2016年で10回目を迎えた『はつかいち縦断みやじま国際パワートライアスロン大会』や、『けん玉ワールドカップ』を開催するなど、地域活性化にも貢献をしている。
デリカウイング株式会社企業HPhttp://dwing.co.jp/

キャッチフレーズ作戦でアピール

――

まず、コピーライターになられたきっかけをお伺いします。

細川

私は大学の時に結婚をしたので、卒業後は何があっても仕事に就かないといけないと思っていて。小さい頃から絵や文章が大好きだったので、コピーライターを選びました。当時はカタカナ職業とか言って、コピーライターってすごく人気のある職業だったんですよ。

――

学生時代に何かモノづくりをされていたんですか?

細川

中学の頃は美術部に入っていましたし、大学は文系学部なんですけど、美大生が出すようなコンクールで入選したりしていました。

――

学生時代はずっと美術をされていたんですか?

細川

いえ、高校の時はサッカー部に所属していました。

――

美術部からサッカー部への転身は珍しいと思いますが?

細川

当時、まだサッカーはマイナースポーツだったけど、国泰寺高校のサッカー部は強くて、モテるんですよ。もちろん美術部にいてもモテないわけではないけど、取り囲まれるほどモテる経験をしてみたかったからね(笑)。

――

モテるためにしたことなどあれば。

細川

本を読んでラブレターに使えるなって思った言葉を、勉強そっちのけで単語帳みたいにまとめていました。誰にどんな言葉を使ったとか、ちゃんとメモしておいてね(笑)。

――

サッカー部の活動はいかがでしたか?

細川

入部の時はたくさん同期がいて、半分が経験者で半分が初心者。けれども3年生が引退する頃には同期は半分くらいに減っていて、試合に出られるチャンスが増えるんですよ。そこで試合に出るために考えたのが、『キャッチフレーズ作戦』。

――

それはどういった作戦でしょうか?

細川

例えば「タフネス細川」と自分で自分にキャッチフレーズをつけてひたすら言う。タフっていうのは、技術うんぬんではなくキツい表情を出さなければいいからね。他にも「タックルの細川」とか言って、自分をアピールしていましたよ。もちろん、そうなるための練習はしましたけどね。

――

部活とラブレターのどちらもがコピーライターの仕事につながっている気がします。

Hint! file20 細川匡氏

弁当の盛り付けは、絵を描くことと同じ

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コピーライターとして東京でご活躍中に、なぜ広島に戻って働く選択をされたのでしょうか?

細川

ひと言でいうと親孝行。親が弁当屋をやっていて、苦労していたから、私が助けようと思って帰ってきたんですよ。そう簡単にはいかなかったんだけどね。

――

東京の広告会社での経験を活かせることはありましたか?

細川

ただおいしい弁当を作るだけではない。弁当も広告も一緒なんです。盛り付けは絵を描くように、どうすればキレイに見えるかなとか、蓋を開けた時に、お客様がどう喜ぶかなど考えていました。だから他所にはないような弁当を作っていたし、そういうのが面白かったんですよ。

――

弁当を広告のように見るとは、考えもしませんでした。

細川

広告で学んだことが弁当屋で活きるなら、逆も然りで、弁当屋で学んだことは広告でも活かせると思っています。

――

なぜコンビニに目をつけたのでしょうか?

細川

広告代理店に勤めていた時、最後のクライアントがコンビニだったんです。流通のことも勉強していたので、将来生き残るのはコンビニと無店舗販売だなと予測していました。

――

実際に今ではコンビニは生活から切り離せない存在になっていますよね。

細川

それと、父の弁当屋は三越の地下に入っていて、営業時間が終わると残った商品は捨てないといけないんです。それはもったいないし、利益も出ないので、ビジネスとしてはおもしろくない。もしコンビニだったら24時間営業なのでまだ売れるのになと思い、コンビニ事業への参入を決めました。

――

何かを選択する時、最後は何を基準にして決められるのでしょうか?

細川

ある程度のデータとか、マーケティングも重要ですけど、結局のところ最後は勘だね。

――

最後は勘で決めるという所で、悩む人も多いと思いますが?

細川

何か決断する時に大切なのは、「決断前の周到な準備」と「決断後の遣り抜く覚悟」です。決断前の準備ができていないと、優柔不断に。決断後の覚悟がないと、中途半端に終わってしまう。そう私は考えていますよ。

Hint! file21 細川匡氏

Happy Together

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企業スローガンの『Happy Together』にはどのような思いが?

細川

社長には3つの使命があると考えています。1つ目は、会社を絶対に倒産させない。2つ目は、社員を公平、かつ高給で遇する。3つ目は、社員を他社でも通用する人材に育てる。

――

2つ目の、『社員を公平、かつ高給で遇する』は、社員の方の目に見える形で現れますが、どのような工夫をされていますか?

細川

学歴や年齢に関係なく、実力のある社員には責任あるポジションを任せます。デザート工場立ち上げの時、周りをよく見ている若手社員に工場長を任せました。彼が高卒ということで周りからは反対もありましたが、1年後にはみんな彼が工場長でよかったと言うんです。結果、今では売上の重要な部門になっています。

――

パートの方にも勤続7年でハワイ旅行をプレゼントされているとお聞きしました。

細川

パートの方って、年収が103万円を超えると税額が変わるので、働く時間が増やせないんです。だから、給料以外で給料に匹敵するものをあげようと思ったら、旅行というのが喜ばれるひとつのツールとしていいんじゃないかなと。

――

ハワイ旅行を受け取ったパートの方の反応はいかがでしたか?

細川

喜んでいただけましたよ。「ハワイ行ったから、もういいわ」って辞めた人は1人もいないです。「もう一回ハワイへ行きたいから、仕事をがんばろう」というモチベーションにも繋がっているみたいですよ。

――

働き手にとっても、やりがいのある職場ということが伝わります。

細川

もちろん、社員だけでなく、お客様や取引先、地域の皆様が幸せになってこその『Happy Together』と考えています。

Hint! file21 細川匡氏

できない理由があるなら、ひとつずつクリアすればいい

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廿日市商工会議所の会頭として、『はつかいち縦断みやじま国際パワートライアスロン大会』に立ち上げからずっと携わっていらっしゃいますが、10年前にトライアスロン大会を始めようと思ったきっかけは何だったのですか?

細川

動機は不純なんです。知人の勧めで、銀婚式に初めて妻とハワイに行って、私もそうですが予想以上に妻が気に入ったんです。ゆくゆくは住みたいということで、ハワイに家を買ったんですけど、なかなか頻繁には行けない。じゃあ仕事をつくろうか、ということでコナの商工会議所と姉妹提携しました。

――

かなり思い切られましたね。

細川

英語もしゃべれないし、どうしようかという時に、コナはトライアスロンが有名なのでこれを廿日市で開催しよう。というところから、『はつかいち縦断みやじま国際パワートライアスロン大会』は始まりました。

――

トライアスロンは思い立ってすぐにできるものなのでしょうか。

細川

もちろん、簡単にできるものじゃないですよ。まずは仲間集めからしました。資金面や交通面など様々な課題がありましたし、失敗もたくさん。それをひとつずつクリアして何とか10年続けることができました。また、社員にも、「できる人はできるやり方を考えて、できない人はできない理由をあげるものだ」と教えています。

――

理由ではなくやり方を考えるというのは重要だと思います。

細川

「できない」と言うなら、できない理由をあげさせて、それをひとつずつクリアしていけば、できるようになるでしょ。できない理由すらあげられない人は、それ以前にやる気がないということだと思いますよ。

――

また、廿日市では『けん玉ワールドカップ』も開催され、国際的にもますます注目が集まっています。

細川

廿日市はロケーションとかインフラが整ったいい街だと思いますけど、よりよくするのであれば、目的を明確にすることだと思います。どういう街にするかという目的が、他の行政の真似事のような相対的な目的ではダメです。

――

それを踏まえて、一歩を踏み出す人にアドバイスをお願いします。

細川

まずは絶対的な理想や夢を掲げること。そしてどうすればいいのか考えてそれを追いかける、それだけで楽しいと思うけどなぁ。社員にもよく『目的を明確にして、ベストを探れ』と言います。これは昔、友人から言われた言葉で、これが私の行動規範なんです。

Hint! file21 細川匡氏

えんぎもん engimon21 空の写真

「僕はあまり物にはこだわってないから」と仰る細川会長ですが、毎日のウォーキングは欠かさないようです。風景を見渡しながら携帯でお気に入りの海や空を撮るのが日課。拝見した写真は昇りはじめた太陽が水面に反射する景色や真っ赤に染まった夕景など、その美しさと細川会長の写真の腕前に驚かされました。なぜ空の写真を撮るのかお伺いすると、「刻々と変化するその瞬間がおもしろいから」とのこと。数多くの写真を見せていただき、ありがとうございました。

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