file20 南研子氏(特定非営利活動法人 熱帯森林保護団体 代表兼理事長)

女子美術大学油絵科卒業後、NHK「ひょっこりひょうたん島」「おかあさんといっしょ」などの番組で美術制作を担当。またコンサートプロデューサーや舞台美術など多方面で活躍する。1989年にイギリスの歌手スティングの来日公演の際にアマゾン・カヤポ族のリーダーであるラオーニと出会う。これを機に熱帯森林保護団体を設立。その後、26年間、2016年3月までに30回アマゾンに訪れ、アマゾン住民に寄り添った支援活動を続けている。また2000年に出版した著書「アマゾン、インディオからの伝言」(ほんの木)をはじめ、講演会などで環境保護と私たちの生活とアマゾンの森との密接な関係を伝える活動を行う。2005年長岡市米百俵財団主宰の米百俵賞受賞や、2014年毎日地球未来賞(毎日新聞)を受賞するなど数多く表彰され、その活動は高い評価を受けている。

片手は自分のため、もう片手は助けを求める人のため。

――

熱帯森林保護団体の活動目的を教えていただけますか?

アマゾンの森とそこに暮らす先住民たちの存続支援を目的としています。

――

具体的にどのような支援をされているのでしょうか?

いろいろなことを26年やってきましたが、まずは植林。私たちが支援する地域は約18万平方キロメートル、本州と同じくらいの広さがあるんです。ただジャングル周辺では開発のためにジャングルを壊してるんですよ。すると昼間が50度で夜は10度、寒暖差が40度もできるの。火種がいつでも地面の下にあるわけで、何かあると火事が起きるんです。

――

植林をしても火事になってしまうのですか?

なので昨年から始めたことが消火訓練です。自然発火防止の事業。GPSを利用しているから、どこかで火事が起きたら、消防の専門家がインディオに消し方を教え、現地に行って消すという事業になります。

――

他にも行っている活動はありますか?

森の周辺が壊れていると、蜂がいなくなります。蜂は空気のいい所にしかいれないので。だから養蜂も行っています。蜂が増えると受粉で森が元気になるし、取れた蜂蜜はみんなの栄養にもなる。今は、消火訓練と養蜂の二本柱で活動しています。

――

いつ頃から国際協力に興味を持たれていたのですか?

きっかけは息子です。息子が自由の森学園という通信簿がない学校に行きたいと。そこでは生徒一人ひとりに合った教育をするんです。改めて教育って大事なんだなと感じたのが最初のきっかけです。

――

そのタイミングでカヤポ族のリーダーであるラオーニに出会ったのですね。

息子も中学生になり、寮に入って時間もあってね。普通だったら息子が反抗する時期なのに仲良くできたから。今度は外で恩返しというか、何か困っていることがあったらほんの少しでも自分が何かできればと思って。だからいつも私は話すんだけど、「片手は自分のため、もう片手は助けを求めている人のために使う」というのをモットーにしています。

――

「助けを求める人のため」というのは、難しいと感じる人もいると思いますが…

私にとって、それがたまたまアマゾンだったんです。必ずしもアマゾンとか被災地に行くとかじゃなくても、隣の人が困ってるのを助けるのでもいいと思う。その代わり、片手は自分の幸せをとことん追求する。自分が幸せじゃない人が人のことを幸せにできるわけないでしょ。

Hint! file20 南研子氏

はじめての印象は、宇宙旅行。

――

年に1回アマゾンに訪問するとのことですが。

1~2ヵ月行っていますね。現地は電気、ガス、水道、トイレ、お風呂もない。そこにだいたい女2人で行くの。傍から見ると心配よね(笑)。

――

現地に行くことは大変ではないですか?

現地に行くのに最低でも3日かかります。ブラジルまで飛行機で30時間、それからバスを乗り継いだりセスナ機に乗ったりして。ジャングルの中に入るには定期バスなんてないし、居住区は国立公園だから誰も入っちゃいけない。だから特別な許可書をブラジル政府に提出して入るの。それはもう全然違う世界よ(笑)。

――

はじめて行かれた時は、恐くなかったですか?

なかったです。何しろあまりにも違うから。宇宙旅行しているのかなっていうくらい。大変だけど心が楽だったの。

――

現地の人たちと同じ生活をしているのでしょうか?

そうです。ホテルなんてないから、現地の人たちのお家にハンモックを吊って、一緒に暮らします。ごはんも一緒。そうすることで同じ目線で何を支援すべきか見えてくるんです。

――

どのような生活をされているか想像もつかないです。

トイレは外だから、「豹に襲われないように気を付けてね」って。どう気を付けたらいいの?!って(笑)。お風呂代わりに川で水浴びするんだけど、川にはピラニアやワニがいるの。そこまで行くのにもジャングルを通っていかなくちゃいけない。途中で蛇も出るし、命がけよ。

――

本当にアマゾンでしか体験できないことですね。

村にはまだ貨幣制度も入ってないの。それに文字もないんですよ。文字はないけど、言葉はある。伝統文化とか色んな習慣は、年寄りから口頭で聞くわけ。だから、みんなが年寄りを大事にするの。

――

日本とのギャップを感じます。

私たちは本があるけど、村にはないから。この人から聞いておかなかったらっていうので子どもたちは年寄りをすごく頼りにするし、年寄りもボケていられないでしょ。

――

お互いを必要としているのですね。

私たちの社会っていうのは、気が合う人といても、これは言った方がいいかなとか、これはやめた方がいいかなとか、瞬時に判断しないといけないでしょ。でも向こうにはそういうのは一切ないんです。表の顔だけ。隠してもすぐわかります。ありのままを受け止めてくれるから。だから心が楽になるんです。

――

写真を見ても表情が本当にイキイキしていますよね。

日本の江戸時代だってこんな感じだったんじゃないかな。競争がないから笑顔も屈託がない。競争をなぜしないのって聞いたら、顔が違うのになんで競争しないといけないのって言われて。確かにそうだなって思いました。それぞれ違う人間なんだからね。

――

教育というのは充実しているのでしょうか?

一応、学校はあります。言葉がしゃべれないことで騙されたり苛められたりするので、ポルトガル語を学んでいます。そういった意味での教育支援も行っていますよ。

――

学校はどのような雰囲気ですか?

村の中に造るから掘っ建て小屋みたいなものだけどね。ただ村の子たちがタイトに感じないようになっています。だから人間だけじゃなくて、オウムが椅子にいたり獏が座っていたりして一緒に授業を受けているの(笑)。

Hint! file20 南研子氏

私たちの生活とアマゾンの森。

――

2014年10月に、ラオーニさんが来日されたとき、日本について何か言われていましたか?

「ここはね古い精霊がいっぱい棲んでいて、お前たちは守られている」って言ってた。「日本はとてもいい所だ。日本人もとてもいい」と。ただひとつだけ日本人に対して注意をしていました。

――

何と言われたのでしょうか?

「自分たちで食べ物を作りなさい」って。 アマゾンの森を壊してまで、大豆を作る必要があるのかって言われたら、その通りとしか言いようがないよね。


Hint! file20 南研子氏
――

アマゾンでの森林破壊のあとには大豆が作られていたのですね。

森をどんどん壊して農場を造る。そして二酸化炭素を出す。森の動物は死ぬし、ブラジル政府や企業は現地に住んでいる人たちの迷惑を顧みないんです。それをよく見ていくと、壊した土地に大豆を植えるんです。その大豆はどこに来るかなと辿ってみると日本に来ているの。

――

あまりその事実を知られていませんね。

みんなスーパーで安いお豆腐とか買うでしょ。だけど、それがどこから来たかというのは、私も考えていなかったの。日本の食べ物の自給率は40%しかない。ということは、60%は他の国からもらっているわけになるのね。

――

私たちの生活とアマゾンは関係があるのですね。

私たちの生活とアマゾンの森が壊れていることは直結しているんです。森を壊して作った大豆を食べているのは私たち日本人なんです。日本とアマゾンは非常に近いんですよ。私やあなたの問題ですよと言いたいんですけど、人間って辛いことには目を背けたいじゃない。

――

私たちはどういうことをすればいいのでしょうか?

毎日お豆腐を食べるところを、週2回にしたり、国産大豆のお豆腐を食べるとか、という方法もあると思う。

――

最近、国産大豆を使用した豆腐をよく目にします。

ただね、国産大豆100%って書いてないとダメなわけ。国産大豆を使っていますは、国産大豆以外も入れていますってこと。だから100%かよく見てください。

――

国産大豆100%ということが重要なんですね。

だから私はアマゾンの森を守るためには、まず地産地消だと思うんですよ。だってその地で採れたものを食べれば他の国に迷惑をかけることはないでしょう。

――

自給率の低い日本では大変なことではないでしょうか?

創造力っていうのは、モノがないから創造するの。だから私がアマゾンに行っても、モノがないでしょ。創意工夫しようってなるの。

――

モノがない=チャンスでもあるということですね。

モノがあると創造力がなくなるの。例えばキャンプとかね。あまりモノがない所に行ってみる。火をおこすにしても、いつも日常で考えないことを考えるわけでしょ。まず何が必要だろうって。物理的なものを排除すると同時に、心にいらないものも捨てていく。そうすると楽。だって人の言っていることなんて気にする必要もないからね。

――

南さんの原動力の秘密を知ることができました。本日は、ありがとうございました。

Hint! file20 南研子氏

2016.4 掲載

えんぎもん engimon20 ブレスレット

取材中も南さんの右手首からチラチラと顔を覗かせるブレスレット。「これ気に入っているんです」と笑顔で見せてくださいました。「そろそろ村にも貨幣制度が入るから、村の女性も手に職をつけて自立できるようにと思ってね」。なんとブレスレットは村の女性が作ったものでした。村の生活が大きく変わることを見越して、事前にしっかりと支援をする南さん。村人にとっても、女性にとっても心強い味方であることは間違いありません。地球の裏側にいても、南さんと村人はずっと繋がっているんですね。

HiNT! トップページへ戻る みづま工房トップページへ戻る