file14 深作健太氏(映画監督)

1972年9月15日、東京都生まれ。東映大泉撮影所のテレビプロにて「戦隊シリーズ」をはじめ、『身も心も』『時雨の記』『おもちゃ』など、様々な現場に助監督としてつく。2000年、父・深作欣二と共に脚本とプロデューサーとして『バトル・ロワイアル』を制作、大ヒットさせる。同作にて日本アカデミー賞脚本賞、藤本賞新人賞受賞。2003年、撮影中に逝去した父の跡を継ぎ『バトル・ロワイアル【鎮魂歌】』で監督デビュー。同作にて毎日映画コンクール脚本賞受賞。以後、撮影所出身の娯楽映画監督として、様々なジャンルの作品を監督している。

映画『夏休みの地図』WEBサイト
http://www.natsu-chizu.com/

子どもたちとの“お祭り”

社員K

『夏休みの地図』を撮ったきっかけを教えてください。

深作

10年くらい前に脚本家の鴨さんが書いた本を読んでいて、とても面白かったのを覚えていました。それから鴨さんが映画を撮ることになったと聞いて、監督が決まってないなら是非やらせてほしいと伝えたんです。

社員K

脚本を読んでどのような印象を受けましたか?

深作

子どもがとても活き活きと描かれていました。鴨さんが描く子どもたちがチャーミングだったし、自分も子どもが好きなので、子ども映画をしっかり撮ってみたかったんです。広島を舞台にした広島の子どもたちが主役の地産池消映画。これは楽しい“お祭り”になるんじゃないかと思いました。

社員K

今まで子ども映画を撮ったことは?

深作

『バトル・ロワイヤル』も子ども映画と言えば子ども映画ですが、あれは意味合いが違いますね(笑)。昔、短編で『こども侍』という子どもばかり出てくるオムニバス映画を、押井守さんたちと作ったことがあります。

社員K

子ども映画の現場は普段と違いますか?

深作

実際、大人と仕事するよりも楽しいですね(笑)。僕自身、子どもの頃から映画業界で遊んでもらって、映画づくりというのは真剣に遊ぶ“お祭り”だと思っています。同じような作品ばかり撮って、場慣れしていくと“お祭り”自体が楽しくなくなっちゃう。初めて会う人だったり、一生懸命に演技をする子どもだったり、一緒に仕事をしていて本当に楽しい。この映画は夏に撮影したので、現場はとても暑くて大変だったけど、楽しさの方が勝っていましたね。

社員K

子どもたちが観て、本当に楽しめる映画だと思います。

深作

自分の作品は特に若い人たちに観てもらいたいと思っています。10代の頃に観た映画というのは、ずっと心に残っているものじゃないですか。『スターウォーズ』や『スタンドバイミー』とか、僕自身が少年時代に観て心に残った映画のようになってほしいですね。

Hint! file14 深作健太氏

どうしても留めておきたい風景

社員K

広島で映画を撮るのは初めてですよね?

深作

広島にじっくり滞在したのも初めてですね。イベントで市内に少し寄ったことはありましたけど。映画のロケハンで二葉山に登って、鴨さんが少年時代を過ごした風景を見て、山、川、海、四季折々の風景がとても素晴らしいんだろうなと思いました。

社員K

鴨さんが映画をつくるきっかけにもなった駅前の更地を見て、何を感じましたか?

深作

これは日本中の駅前再開発で見られる光景です。戦後の日本を支えてきた経済成長が一段落して、次の段階へシフトしようとしている。駅前には大きなショッピングセンターやホテルが建って、どこ見ても同じ顔になっています。そうなる前に、消えゆく風景を留めておきたいという気持ちが真剣にあるんです。数年後にこの映画を観返したときに、広島の人にとって大切なものを映せているんじゃないかなと思っています。

社員K

街の変化と子どもたちの成長がリンクしているわけですね。

深作

変わっていくということは、子どもたち自身がそうなんですよね。この映画に出演してくれた子どもたちも、数年後には今よりも格好良くなったり、可愛くなったりして大きくなる。子どもが大人になる前に、ひと夏の思い出として留めることが大切なんです。

社員K

演技経験の無い子どもたちを起用した理由を教えてください。

深作

東京から子役を連れていって、広島弁をしゃべらせても面白くないじゃないですか。初めて現場に参加する子どもたちは、朝早くから遅刻もせずに来て、暑い中一生懸命頑張ってくれました。プロの僕たちもふんどしを締めなおさなくちゃと思いましたよ。

社員K

子どもたちへの演技指導は大変でしたか?

深作

全然。むしろ彼らに支えられましたよ。台詞もしっかり覚えてきてくれて、頑張っている姿に元気づけられました。子どもたちが頑張っているのに、僕らも疲れた顔を見せられないですからね。

Hint! file14 深作健太氏

人はすぐに忘れてしまう

社員K

『夏休みの地図』を通して、観客に伝えたいことを教えてください。

深作

これから10年、20年経つと戦争を経験された方はどんどんいなくなってしまう。そうなる前に、今の言葉を留めておきたいという気持ちが強くありました。その大切な言葉を観客に伝えたかった。映画というのはフィクションの世界ですが、嘘をつき続ける切なさがどこかにあったんです。この映画は100%フィクションではありません。虚構と現実の境界線を撮りたかった。

社員K

後半は特に監督の意図されている部分ですね。

深作

戦前から広島に生きている人たちの声、健太君(主人公役)の赤ちゃんの頃からの写真も歴史も本物です。広島という街が復興して、元気な子どもたちの姿が今もある。それはどんなフィクションよりも強いんです。

社員K

広島の街を通して伝えられることはたくさんありますね。

深作

僕自身、ひとつの街をテーマに撮ったのは初めてです。広島の街の歴史と変化、子どもたちの成長とそこに生きてきた人たちの記憶を描きたかった。この映画は、まず広島の人に観てほしい。広島以外の人にも観てほしいという気持ちも強いです。東京は大空襲という悲惨な歴史があったのにすぐ忘れてしまった。都市というのは歴史が更新されてしまいますからね。だけど、震災後の今の日本だからこそ、この映画を撮る意味があったと思います。

Hint! file14 深作健太氏

『仁義なき戦い』の精神

社員K

これから挑戦していきたいことはありますか?

深作

次は沖縄をテーマに撮りたいと思っています。沖縄も日本の最前線のひとつですし、沖縄戦の記憶や米軍問題をしっかり描いて留めたい。そのあとは、大震災から復興を遂げようとしている福島に行きます。映画の作り手として、自分の地図をしっかり持っていたいですね。

社員K

難しいテーマをどんどん撮ってほしいです。

深作

タブーを追いかければ追いかけるほど、人は臭いものに蓋をしたがります。『バトル・ロワイヤル』を撮ったときは、国会にまで取り上げられましたからね。それでも撮りたいものは撮る。親父もそういう戦いをしてきたと思いますし、ダメだと言われると燃えますよ。『仁義なき戦い』が生まれた背景にもその精神があったと思います。僕自身、映画監督はずっと続けていきたい。そのために、映画を通して何を刻むかが大事なんです。

Hint! file14 深作健太氏

2013.7 掲載

えんぎもん engimon14 汁なし担々麺

「美味しいですよね~、広島に来たら必ず食べます。気合入れるのにピッタリです」と、広島で大ブレーク中の汁なし坦々麺にハマっているという深作監督。
「家の近くに汁なし坦々麺のお店があったんですけど、すぐに無くなっちゃったんです。こんなに美味いものがあるなんて!と毎日通っていたんですけど…。暑い時とかにいいですよね、あの辛さがたまりません。実はここに来る前にも食べてきました(笑)。映画の撮影中によく行ったお店は『キング軒』と『麻辣商人』。汁なし坦々麺は辛くてしびれるけど、本当に美味しい!」
山椒と唐辛子のしびれるような辛さがクセになり、一度食べたら病みつきになってしまう汁なし坦々麺。汁なしなんて…とお思いの皆様、本場中国・四川省の坦々麺には汁がないんです!広島に来た際には、深作監督もハマッた本場の味をぜひご賞味ください。

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