file10 平田克明氏(有限会社平田観光農園 代表取締役 会長)

1940年、広島県三次市生まれ。年間20万人以上の観光客が訪れる果物のテーマパーク「有限会社平田観光農園」を経営する他、「株式会社三次ワイナリー」「株式会社果実企画」を設立。果実加工・レストラン・売店など6次産業の先駆け事業を行った。国の農業政策に係る他、農林水産省農政審議会委員・広島県教育委員長・経済同友会備北支部長など、地域活性化に取り組んでいる。日本農林水産祭天皇杯、日本農業賞大賞、農事功労者表彰(紫白綬有功賞)など数多くの賞を受賞し、内閣府及び国土交通省が中心となって選定する「観光カリスマ百選」にも選ばれている。

平田観光農園WEBサイトhttp://www.marumero.com/

「三次ピオーネ」をつくった男

社員K

平田観光農園を設立する前は、研究者だったと聞きます。

平田

私は公務員として、長野県の農業試験場で9年間ブドウ栽培の研究をしていました。そこでは、3000haの巨峰の産地を育成する仕事に係り、長野県を全国一の巨峰の産地にすることができました。その後、大学の先輩から「広島のブドウ生産安定のために力を貸してほしい」との誘いを受けて広島の果樹試験場に移ったんです。ブドウの品種改良などの研究に13年間携わり、広島のマスカットベリーAにストレプトマイシンという抗生物質を使って、種なしにする生産技術を世界で初めて成功させることができました。

社員K

三次ピオーネも平田さんが開発したんですよね。

平田

実家のある三次市から「ブドウ畑を作りたいんだけど、何を栽培したらいいのか?」という相談があって、大粒で果汁豊富なピオーネがいいのではないかと提案したんです。ピオーネは栽培が非常に難しい品種のブドウでしたが、私が研究した技術を使えば成功できるのではないかと考えました。多くの人に反対されましたが、あえて誰も作ろうとしないブドウに挑戦したんです。そして技術改良に成功して、実が大きくて種のない三次ピオーネが誕生しました。

社員K

初めて三次ピオーネを見たときに「広島のブドウってこんなに大きいのか!」と驚きました(笑)。

平田

ありがとうございます(笑)。広島を代表する特産品になり、今では三次ピオーネは全国に広がっています。そして今度は「倒産した会社の農園を引き受けてほしい」という相談が来たんです。当時、子供たちが大学や私立高校に入る時期でお金がとても必要だったので、引き受けていいのかなと悩みました。でも、私は5人兄弟の長男としていずれ親の面倒を見なくてはいけないなあと思っていましたので、実家の近くで親孝行をしつつ農場経営をしてみようと引き受けたわけです。

Hint! file10 平田克明氏

危機を救ったアイデア

社員K

研究者から経営者へ、大きな決断でしたね。

平田

突然の話でしたからね。でも、研究者として農業に携わってきた頃から、若い人たちが働いてみたいと思う農園づくりができたらいいなと考えていました。

社員K

そういう考えからできたのが「平田観光農園」だったんですね。

平田

観光ができる農園にしたのは、果物を作って収穫するだけでなく、都会から来た人たちも自然の中で楽しめる場所にしたかったからです。果物を食べながら農園を散策して、美しい景観があり可愛い動物たちとも触れ合える。家族連れやカップルまで幅広い層の観光客においでいただければ、地域の活性化にもつながり、若い人たちにも農業が魅力的に見えるのではないかと考えたんです。そして今では、年間20万人以上の観光客の皆様に楽しんでいただける農園になりました。将来、オランダのキューケンホフ公園のような美しい農園にしていきたいですね。

社員K

すごいですね。これまでは狙い通りになっていると思いますが。

平田

いえいえ、ここまで来るには色々なことがありました。1991年9月の台風19号に襲われた時には、栽培中のリンゴ20万個すべてが落ちてしまったんです。木や施設も倒されて、当時の金額で約5000万円の被害でした。これはもう倒産だな、と思いましたよ。

社員K

大変な被害でしたね…どのようにして立て直したのですか?

平田

当時はリンゴとブドウしか栽培しておらず、どちらも秋に収穫を迎える果物でした。そこで、台風の来ない時期に収穫できるイチゴ、サクランボ、ブルーベリーなど色々な果物も植えることにしたんです。一年中収穫できる果物が農園のあちこちにできれば、観光客の皆様にもっと楽しんでもらえるし、レストランや売店を作って新鮮な果物やジャムなどの加工品を販売できるのではないかと考えたわけです。

社員K

なるほど、台風の被害から逆にヒントを得たわけですね。

平田

あのとき台風が来なければ、今頃倒産していたかもしれませんね(笑)。私は成功には「失敗」が欠かせないと思っています。失敗することによって、その苦境を乗り越えるための新しいアイデアが生まれてきます。研究者時代も失敗を重ねて新しい技術を開発してきました。何事も挑戦することが大切ですよ。

Hint! file10 平田克明氏

三次市を訪れる観光客が5倍に!

社員K

観光農園以外にも有名な観光地をつくったと聞きます。

平田

三次市に観光農園ができる前は、観光施設と言えば歴史民族資料館しかありませんでした。そこで、私は研究者時代にワインの研究もしていて醸造技術もあったので、観光客を呼べるワイナリーづくりをしましょうと提案したんです。それでできたのが「(株)広島三次ワイナリー」です。その後、周辺には君田温泉や備北丘陵公園などができて、三次市には多くの人が訪れるようになりました。ここ20年の間に、広島県内で最も観光客を増やしたのは三次市で、訪れる観光客は20年前と比べて5倍以上になったんです。

社員K

平田さんの知恵と技術が地域活性化につながっていますね。

平田

研究者時代にお世話になった長野県には、ドライフルーツの製造会社「株式会社果実企画」を設立しました。当時のドライフルーツはほとんど輸入品だったんですが、中国餃子事件で国産品が見直され、国産のドライフルーツを作らなければいけないと思ったんです。長野県にも少しは恩返しができたかな(笑)。

社員K

最近のお仕事では、どんなことをされていますか?

平田

瀬戸田で「オフィスみかん」の生産を始めました。瀬戸田は温暖な気候でミカンづくりに最適な場所ですが、ここでも農家の高齢化問題はあります。そこで相談を受け、お手伝いを始めたんです。ミカンの爽やかな香り成分シトラスには、眠気を覚まして集中力を高める効果があると言われています。必要な栄養素も摂れて職場が元気になる「オフィスみかん」と名付けて販売し、好評を得ています。

Hint! file10 平田克明氏

世界に通用する農園づくり

社員K

観光農園では社員教育を大切にしていますね。

平田

私は広島県の教育委員長を務めていたこともあり、教育の大切さを強く感じています。今の教育で決定的に欠けているのはコミュニケーション能力。グローバル社会で生き抜くためには語学力が必要です。ようやく小学校四学年から英語を学ぶようになってきましたが、教員が英会話に対応できていないという問題もあります。教育の課題はまだまだ多いですね。

社員K

これからさらに挑戦していきたいことはありますか?

平田

やはり人材育成です。経営を任せられる人間を育てて、今ある会社をチェーン店のように全国展開していきたい。人材を育成しながら事業を広げていって、最終的には海外でも農園づくりがしたいですね。平田観光農園で育った海外からの研修生たちは、自分の国に戻って、中国で観光農園を開いたり、マレーシアで果物加工会社を作って成功していますので、弊社の経営方法や生産技術は世界でも通用すると信じています。

Hint! file10 平田克明氏

2013.1 掲載

えんぎもん engimon08

「私は辰年生まれなので、辰グッズをコレクションしています。旅行先で辰の商品があったら必ず買いますね」。自宅にはバカラの置物など辰グッズを約15種類揃えているという平田会長。力強く神々しいイメージから、中国古来では皇帝のシンボルとされている龍(辰)は、天に昇ることから縁起が良く、隠し持っている玉にはどんな願いも叶える力があるといわれる。
「人に頼まれたら断れない人間なので、色々なことを引き受けちゃうんだよね(笑)」。各地を駆け回り、さまざまな場所で悩んでいる人たちの願いを叶える姿は、まさに平田会長そのもの?
「2012年は辰年だったので、突然、賞を頂いたりと怖いくらい良いことがありました(笑)」。辰年にツキまくっていたという平田会長。2013年はどんな年になるのでしょうか?

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